液中放電による硬質粉体の分散を利用した砥粒層の形成

1.緒論

 研削加工は,超硬,焼入れ鋼等の難削材の加工には必要不可欠であり,これらの加工精度向上に対し,研削加工の依存度は増加している.また,高能率研削を実現するための高速研削やさらなる重研削への対応,ドライ化への対応により,研削砥石の耐久性への要求はさらに高まっている.

 従来から用いられている研削砥石には次の問題点があり,研削加工の高コスト化の原因となっている.

(1) 砥石形状の再生が困難である.そのため,砥石寸法もしくは砥粒層の減少により砥石の寿命となると,再利用されることなく廃却される.

(2) 結合剤の砥粒保持力が低いため,硬質材料の加工において砥粒が砥粒摩耗前に脱落する頻度が高くなる.

 これらを解決するためにさまざまな砥石製作法が提案されている.また,圧粉体やスラリを用いた液中放電堆積加工を利用してワイヤにタングステンやチタン化合物を付着させ,研削に用いることも提案されている.

 本研究では,上記問題点の解決手段として砥石形状の再形成プロセスを開発することを目的とする.あわせて,高硬度の結合剤を用いて,砥粒保持力を増大させることを目指す.これらを同時に実現するために,圧粉体電極を用いた液中放電堆積加工法を用いて摩耗した部分に砥粒層を再形成する.

高硬度な結合剤の一つであるビトリファイドボンドを用いた研削砥石の砥粒層をFig. 1に示す.砥石3要素と呼ばれる切刃となる砥粒,それを保持する結合剤,切りくずの逃げを助ける気孔によって構成されている.さらに砥粒保持力を増加させるためには,さらに高硬度な結合剤を用いればよいと考えられる.また,砥粒層を摩耗した部位に付着させれば,砥石を再形成でき,砥石の総合的な寿命を延ばすことができると考えられる.

Fig. 1 Structure of grinding wheel

 放電堆積加工の工具表面処理では, TiC被膜を冷間鍛造型パンチの円筒面に均一に被覆させた例や,ドリルの逃げ面へのTiC処理が報告されてい.しかし,これらの膜厚は20[μm]以下であった.砥石として用いる場合には,厚さ数100[μm]以上の堆積層を円筒面に均一に堆積させることが望ましい.また,高速で回転させるために動バランスを取る必要がある.

 本稿では,圧粉体電極を用いた放電堆積加工において,従来は導電性粉体のみで構成されていた電極に絶縁性粉体を混入し放電加工することで,砥粒層形成の可能性を検討した.適用可能な粉体の種類,粒径の範囲などを実験的に検討するとともに,砥粒率および砥粒保持力に直接影響を与える結合度を評価した結果について述べる.次に,動的な評価のために砥石を試作し,実際に研削することで堆積層の研削性能を評価する.あわせて,形状フィードバック型加工法を適用することにより,砥粒層の再形成を試みた結果についても述べる.


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Last modified on 07/26/2003 at 08:46:30 by Katsushi Furutani