豊田工業大学

教育優秀賞/プラクティス優秀賞

平成21年度前期「教育優秀賞」「プラクティス優秀賞」受賞者の決定について

 平成21年度前期の「教育優秀賞」「プラクティス優秀賞」受賞科目、受賞者が下記のとおり決定しましたのでお知らせします。
 学生諸君には、授業アンケートおよび投票に協力いただき、ありがとうございました。
 平成21年度後期も両賞の選考を行います。積極的な投票をお願いします。


平成21年度前期 受賞者

                 「教育優秀賞」
              受賞科目:半導体デバイス工学
                「プラクティス優秀賞」
       受賞科目:工学基礎実験1(光の性質(回折、干渉、偏光))

      写真
      大澤 潤 准教授

      写真
      齋藤 和也 教授


教育優秀賞受賞者の感想

リアルワールドへの助走
   大澤 潤 准教授

 「大学では基礎をやればいいんだ」---学生時代の恩師がよく言っていた。そこに多少言い訳めいた響きを感じていたように覚えている。当時の大学はまさに象牙の塔と呼ぶにふさわしく、もう少し教育に工学的な要素も必要だろうよ、と思ったものだ。
  それからン十年。教える立場になって感じる。学生は純粋培養? 基礎を勉強し過ぎた? デジタル仮想世界で遊びすぎ? の感。
  確かに、初学者には主要な原理を断定的に教えないと混乱を招く。こんな要素もある、あんな要因もある、と正確を期すと、聞き手はどれが重要なのかが分かりづらい。条件や状態を単純化理想化して核心を把握させることが、教え方の第一歩かも知れない。しかし、それだけでは済まないことも意識させねばならない。さもなければ、いつまでも、○○の公式を使って解は…というやり方で済まされそうだ。現実はもっともっと複雑。その中でいっとう大きな要因は何だろうかと考えさせたい。
  工学系の大学では、学年が進むにつれて現実問題の複雑さを意識させるような誘導が必要ではないか。初めは、理想化した原理を教えても、少しずつ現実世界のグレーエリアを垣間見させて、さあどう対処しようかと考えさせる。答えは幾通りもあるだろう。君ならどうすると問いかけたい。そろそろリアルへの助走の時だよと。
  とまあ、ここまで考えたが、学生からダメ出しされそうに思う。結局わからん、すっきりしない、正解を示せないセンセイはダサイ、などと言って。なるほど、○分でわかる、○○でもわかるという表題の本が次々に出ている。カタリシスを提供する物語や楽曲も人気のようだ。かくして、これから旅立つ現実社会はこんなにグレーで正解が見えないぞ、と宣告したい教師は、学生に受けそうにない考えを持て余し、モヤモヤの日々を送るのだった。

 

 


プラクティス優秀賞受賞者の感想

プラクフィス優秀賞を受賞して
   齋藤 和也 教授

 工学基礎実験1「光の性質」では、当然、「光の性質(回折、干渉、偏光)について実験を通して理解する」ことを達成目標としている。しかしそれ以上に重点をおいているのが、学生に「線形代数の活用法、重要性、そして面白さを認識してもらう」ことである。線形代数は理工学で必要な概念がたくさん含まれているが、大学初年次で学ぶときに、それらをすべて理解するのはなかなか難しい。この実験を通して初めて実感としてわかった(もしくはわかったような気になった)ことが、この実験テーマが面白くて役に立ったと学生が判断した要因になっていると思う。レポートの所感やアンケート結果を見ても、そのような意見を書く学生が非常に多い。
  具体的に本テーマで扱う線形代数の内容を記すと、以下のようである。
(1)複素ベクトル:偏光状態は、複素ベクトルを用いて表すことができること。
(2)線形変換とその表現行列:位相差板による偏光状態の変化は線形変換であり、その表現行列はユニタリ行列であること。
(3)基底変換による行列の対角化、および固有値と固有ベクトル:2枚の直交する偏光板に挟まれた位相差板を回転させると、位相差板に入射する直線 偏光の偏光方向が位相差板の主軸(固有ベクトル)の方向に一致したときのみ、偏光状態が変わらなくなること。そのとき、表現行列は対角行列として 表されること。
(4)フーリエ変換とその性質:フラウンホッファー回折像がスリットのフーリエ変換像と結びついていること。また、スリット幅を変えたときの回折像の変化   が、フーリエ変換の重要な性質を示しており、量子力学で習う不確定性関係の理解にも重要なこと。
  本年度から、初年次後期の線形代数2を担当しているが、この実験テーマと有機的につなげて理解度を上げる試みをしている。「どのような点が学生にとって理解しにくいのか」、「どのように説明すればイメージしやすいのか」など、この実験における諮問やレポートを通じでわかったことを活かせればと思っている。また、成清先生に制御分野での線形代数の重要性を説明するスライドを作っていただき、授業で使用したところ、これも好評であった。大学評価で必ず審査対象になることからも科目間連携は重要である。今後、他の実験科目や授業との連携をより積極的にとり、学生の(特に初年次教育における)理解度を向上できるように努力したい。