圧電素子駆動電圧と変位の関係は、実験から求めた係数行列 を用いて次式のような線形モデルで表すことができる。
x=GV、x=(x, y, q)T 、V=(Vx, Vy, VqA, VqB)T (1)
ここで、xは3次元の変位ベクトルであり、Vは各運動モードにおける圧電素子駆動電圧である。圧電素子は2個であるが、移動方向により電磁石の動作が異なるため、並進と回転を分離して考えることにした。そのため、運動モードは、x、y駆動とPAによるq駆動、PBによるq駆動の4つとなり、Vは4次元ベクトルとなる。したがって、Gは3×4行列となる。位置決めでは、式(1)を変形した
V=G+x(2)
を用いる。G+はムーア・ペンローズ一般逆行列である。式(2)のxに目標値または偏差を代入すると、各運動モードごとの圧電素子駆動電圧が求まる。その中で最大値をとる運動モードを選択し駆動する。この動作を位置決め終了条件に入るまで行なう。本実験では、圧電素子駆動電圧を100VのみとするBang-Bang制御を行なった。圧電素子へは立ち上がり時間が4msの放物線状波形をパーソナルコンピュータで作成し、駆動アンプを通して印加した。電磁石のオン・オフ動作を確実に行なうために、電磁石オン後3ms、オフ後7ms経過してから圧電素子を動作させた。
目標値としてx=100mm、y=100mm、q=1mradをそれぞれ独立に与えた。位置決め終了条件は100V駆動時の平均変位の1/2(x=4.9mm、y=4.3mm、q=0.035mrad)とした。それぞれ正負の方向に50回ずつ、計100回の位置決めを行なった。実験結果を表1に、x方向への位置決め例を図12に示す。位置決め誤差は各方向とも同程度であり、設定した終了条件以内の位置決めが可能であることが分かる。位置決め時間は各方向で異なっているが、干渉が生じやすい方向で長い時間がかかっている。特にq方向の位置決めでは、時間がかかると同時にばらつきも大きい。q方向駆動時には、xまたはy方向への干渉が必ず存在するために位置決め時間が長くなる。また、駆動する場所により摩擦状態が異なり、移動量・干渉量が変化することがばらつきが大きくなる原因の一つと考えられる。
Table 1 Result of positioning
x = 100 mm | y = 100 mm | q = 1 mrad | Dead zone | |||||
m | s | m | s | m | s | |||
Positioning error | x mm | -1.3 | 2.5 | 0.0 | 2.4 | -0.3 | 2.4 | 4.9 |
y mm | -0.8 | 2.3 | -0.8 | 2.4 | -0.3 | 2.1 | 4.3 | |
q mrad | 0 | 29 | -6 | 27 | -6 | 26 | 35 | |
Settling time ms | 342 | 129 | 414 | 191 | 744 | 412 |
m: average, s: standard deviation
Fig. 12 Example of positioning in x |
Last modified on 08/06/2003 at 14:54:52 by Katsushi Furutani