液中放電による硬質粉体の分散を利用した砥粒層の形成

8.結論

 リサイクル可能で砥粒保持力の強い砥石を製作するために液中放電堆積加工による新たな研削砥石の製作法を提案し,砥粒層形成を試みた.性能評価のため,実際に研削加工を行った結果,以下のことが明らかになった.

(1) 導電性粉体に絶縁性粉体を混合して圧粉体を作り,それを電極にして放電加工することで,絶縁性粉体を堆積層中に分散できることが明らかになった.

(2) 各種砥粒材料を用いた実験より,主要な砥粒材料の適用が可能であることが明らかになった.また,適用可能な砥粒径の範囲が明らかになった.

(3) EDXを用いた定量分析から求められた砥粒層の砥粒含有率は通常の砥石より低かった.しかし,硬さを評価した結果からは結合剤の結合度は通常の砥石と同等以上であると考えられる.

(4) 砥粒を混合した圧粉体電極を用いた液中放電堆積加工で形成した砥粒層は,研削能力を有していた.研削比が従来砥石より低かったのは,砥粒率が低いことが原因の一つと考えられる.

(5) 結合剤となるWC-Co堆積層の強度をアルミニウムを加工することにより評価した.台金上に新規に堆積したものと,摩耗した堆積層上に再形成した堆積層の両方ともはく離や脱落を生じなかったため,研削に十分な強度を持つと考えられる.したがって,本方法を用いれば研削砥石のリサイクル化が可能であると考えられる.

(6) 円筒状の台金上に均一に堆積層を形成させるために,ラック・アンド・ピニオンのように台金と圧粉体電極を相対運動させながら堆積加工する方法を提案するとともに,形状フィードバック加工により砥粒層を形成した.厚さ300[μm]の堆積層を直径18[mm]の台金上に形成する目標に対し,直径の誤差は10[μm]であった.

 実験からWC-Co堆積層中に分散可能な砥粒径には上限および下限が存在することが明らかになった.今後は,分散可能な砥粒径の範囲を広げる方法について検討する予定である.また,液中放電堆積加工により砥粒層を形成・再形成できることが明らかになった.しかし,研削比は従来砥石に比べ十分とはいえない.したがって今後は,研削比を向上させるため,砥粒率を改善する方法を検討する予定である.


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Last modified on 07/26/2003 at 08:46:30 by Katsushi Furutani