1.略歴
学歴
1984, 東京大学工学部物理工学科卒業
1986, 東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻課程修士課程修了
1989, 東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻課程博士課程単位取得後退学
1989, 工学博士
職歴
1989-1990, 理化学研究所 基礎特研
1990-1992, Bellcore, NJ, U.S.A. (Univ. of Illinois, Urbana-Champagne
研究員)
1992-1995, Imperial College, London, U.K. (JRDC 研究員)
1995-1998, 東京大学先端科学技術研究センター (JRDC/JST 研究員)
1999-2004, 三菱化学、及び 三菱化学科学技術研究センター
2004- 豊田工業大学 (現在に至る)
併任
1987, Visiting Scientist, AT&T Bell Laboratories, NJ, U.S.A.
1993, Visiting Scientist, Technische Universitat Berlin, Germany
2001-2004, 東京農工大学大学院 連携大学院教授
2000-2007, 理化学研究所フロンティア研究システム 非常勤研究員
2.研究内容
表面・界面科学
量子ナノ構造の作製並びに物性
超高真空から液相に渡る諸プロセスの統一的理解と応用
物理(電子工学)と化学の融合による新規材料・デバイスの探索
3.研究への思い
学部学生だった時に表面の研究を始め、今に至っています。 学部2年と時だったと思いますが、
光触媒、特に「本多-藤嶋効果」に大変興味を持ち、余り化学も半導体も分かっていなかったのですが
漠然と化学と物理を融合させた領域の研究をしてみたい、と考えました。 多分その理由の一つが私が
化学が大変不得手(物理もさして出来た訳ではありませんが)で、それを克服したかった事があると
思います。
以来、表面の化学反応の理解と制御を物理的観点からアプローチし、その成果を環境やエネルギー
問題に役立てたいと思う様になりました。 小中学校時代、学校で公害問題を習い、高校・大学の頃は
サンシャイン計画が走っており、素朴な、というより、余りにナイーブな選択だったかも知れません。
学生として、対象を金属・半導体として古典的な超高真空の表面科学に取り組みました。 が化学
反応を研究したかったので、その内に「動的表面」に移行したいと考え、様々な研究所で対象を
半導体結晶成長として、その方向に進みました。 が、これをMBEやMOCVDを使って進めている
内に、所謂量子構造の作製や物性評価をする様になりました。 この中で、量子構造と表面・界面の
影響というものを考え始め、これを利用して化学と電子物性の関係を調べる事を計画しました。
MBE で成長した GaAs(001) 上の InAs 量子ドットの AFM 像
(東大先端研での成果)
どうしても化学者との共同研究をしたく、 1999年、三菱化学の研究所に入れて貰いました。
ここで幸か不幸か、コロイダルナノ粒子との出会いがありました。 初めて下の写真の様な
溶液に分散された CdSe ナノ粒子からの蛍光を見た時の驚きは今も忘れません。 化学の方
にはそれ程の驚きではなかった様ですが、超高真空中で作製し、清浄表面を保たなくていけない
という半導体の常識の中で育った私にとって、「液相で合成され、そして分散液の中で浮いている
量子構造が室温で目に見える程の明るさで光るなんて!」、と驚愕したものでした。
CdSe ナノ粒子のコロイド分散液。 紫外線ランプを照射する事で非常に強い蛍光が見られる。
(三菱化学での成果)
こうしたコロイダルナノ粒子はその形状からも、「真の」量子ドットとなり得る可能性を秘めて
います。 加えて、近表面構造に与える表面・界面化学の影響を調べるのに格好の題材で、
特に量子効果を絡ませると、実験材料としてナノ構造は理想的と言えるかも知れません。
こうした背景に鑑み、当研究室では物理、電子工学、化学、化学工学、材料科学、を
広く巻き込み、融合的な研究を目指します。 また、ナノ材料の重要な一つの応用に
生物・薬物がありますので、こうした専門の方とも交わっていければと思っております。