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2022年度 次世代文明センターシンポジウムを開催しました(3/9)

2023.04.10

2023年3月9日(木)に、「これからの時代の人間教育を問う」と題して、次世代文明センター公開シンポジウムを開催しました。未来予測が困難な、不確実な時代において、来るべき次世代の教育のあり方や、次世代に求められる人間像などについて縦横無尽に議論しました。

今回は、初の対面開催+オンライン同時配信となりました。一般参加者と本学教職員・学生をあわせて、約150名が参加しました。

講演者として、村上陽一郎 氏(東京大学・国際基督教大学 名誉教授/科学史・科学哲学)と、石井洋二郎 氏(中部大学 特任教授・創造的リベラルアーツセンター長/フランス文学・フランス思想)のお二人にご登壇いただきました。

村上氏の講演では、まず、「人間になる前」の胎児が、「人と人との間」としての「人間」になるという現象に焦点が当てられ、社会における協働保育の重要性が説かれました。母胎である「第一の子宮」に対して、「第二の子宮」と呼ばれる哺育共同体の中で、人間は人間として「造られ」、行動規範や価値観、倫理観、言語などを学びます。中でも、言語習得は大きな意義を持ち、言語はコミュニケーションの道具である前に、「認識」の道具であることが説かれました。そこから、「型」を学ぶだけでなく、「型」からはみ出ることの重要性が語られ、「こうでなければならない」という教育に対して、「もっと他のようでもありうるかも」という教育が日本には欠けているという洞察が示されました。これを村上氏は、「頑固親父」と「物わかりの良い母親」という比喩を使って説明しました。そして、第三の途として、歴史(時間移動)と旅(空間移動)という観点が示され、その時代、その土地の価値観を内側から理解することの意義が説かれました。

続く石井氏の講演では、現代を「VUCAの時代」と見据えたうえで、「何を教えるか?」、「どう教えるか?」、「いつ教えるか?」という三つの側面から分析が進められ、最終的に人間教育としてのリベラルアーツ教育の重要性が説かれました。まず、大学設置基準の大綱化について、わかりやすく整理されました。戦後の新制大学では、教えるべき学問分類はあらかじめ確立されており、「何を教えるか」について改めて問われることはありませんでした。ところが、「大綱化」により旧来の学問区分が廃止され、各大学や教員ひとりひとりが、「何を教えるか」を問う必要が生じました。そこから30年以上が過ぎ、インターネット全盛時代である現代では、新たな局面に入りつつあります。現代の学生が身につけるべき資質は、大綱化のときと同じではありえず、社会が要求する新しいコンテンツが求められています。それに応じて、教え方についても、一方向的な「講義形式」から「アクティブ・ラーニング」への移行が進みつつあります。こうした風潮の中、21世紀型リベラルアーツ教育の一つの大事な要素として、石井氏は「対話」に基づいた「批判的思考力」の涵養を強調しました。同時に、教師のあり方、姿勢についても所見が示されました。

両氏の講演のあと、本学から保立和夫 教授(豊田工業大学 学長/システム光波工学)と江口建 教授(人文科学研究室/哲学)がパネリストとして加わり、パネルディスカッションを行いました。江口教授が司会を務め、両氏の発表からいくつか論点を取り出したうえで質問を投げかけました。また、聴講者から寄せられた質問やコメントを基に、活発な質疑応答を行いました。各自が、これからの時代の人間教育のあり方に想いを馳せる時間となりました。

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パネルディスカッションの様子

左側:江口教授、保立学長、右側:村上陽一郎氏、石井洋二郎氏

【講演動画】

◎講演1 村上陽一郎(豊田工業大学 次世代文明センター長) 「人間・教育・社会」

画像を拡大してご覧いただく場合はこちらへどうぞ。

◎講演2 石井洋二郎(中部大学 特任教授/創造的リベラルアーツセンター長)

 「21世紀に求められる人材像とは?」

画像を拡大してご覧いただく場合はこちらへどうぞ。

関連書類ダウンロード

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村上陽一郎氏   

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石井洋二郎氏