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ナノ光科学

ナノスケール物質と光の相互作用、光マニピュレーション、光ピンセット、中赤外レーザー、分子振動、分子選別、レーザー顕微鏡の開発

光でナノの世界を操る

研究背景と研究室の概要

光を用いることで、微小な物体を非接触で動かし、操作することができます。光には質量(重さ)がありませんが、運動量を持つため、物質に物理的な力を加えることが可能です。この力は「光圧」や「輻射力」と呼ばれています。この力を利用した「光マニピュレーション」技術は、赤血球やウイルスから、タンパク質、分子、さらには原子までをも捕捉・操作できる技術へと発展してきました(2018年ノーベル物理学賞の「光ピンセット」はその代表例です)。

 近年、当研究室では世界で初めての試みとなる中赤外レーザーを用いた光マニピュレーションの実験を開始し、狙った分子を選択的に操作できる新しい原理を発見しました。本発見をきっかけに2024年度創発的研究事業の採択にも繋がっています。

本研究室では、この独自コア技術を基盤として、以下の最先端の基礎・応用研究を展開しています。

* 光圧によるナノ光クロマトグラフィーや単一微粒子赤外分光
* 分子種選択的に光トラップ・操作・選別する技術
* 光熱効果を利用した微粒子・細胞の局所濃縮技術
* 中赤外領域の光圧の可能性を探求する基礎研究
* クリーンルームにおける中赤外光の局在増強ナノ光場の創出

これらの研究を通して、光でナノの世界を自在に操る革新的な技術の創出を目指しています。以下では代表的な成果例を示します。

研究テーマ1:ナノ光クロマトグラフィー

物質の性質を示す最小の単位である分子は、微視的に観察すると振動しています。その振動周波数は、分子を構成する原子や分子の構造を反映しています。その振動周波数と同じ周波数の光(中赤外光)が分子に当たると、その光は吸収されますが、吸収される光の波長から分子の種類、吸収される光の割合から分子の濃度を知ることができます。

我々の研究では、シリカ微粒子の分子振動(シロキサン結合として知られるSi-O-Si結合)に共鳴する中赤外レーザーを使って、その物質のみを選択的に光輸送することに成功しました[Phys. Rev. Applied 18, 054041 (2022)][J. Phys. Chem. Lett. 14, 7306-7312 (2023)]。中赤外レーザー波長を所望の分子の吸収線に対応させることで、分子構造に応じた光選別が可能になると期待されます。

研究テーマ2:光圧の応答から単一微粒子の赤外分光をする

波長可変量子カスケードレーザーを利用し、微粒子の進むスピードがレーザー波長に依存することを初めて見出しました[Anal. Chem. 97, 14658 (2025)]。この移動速度は微粒子の吸収量と比例し、各波長における速度を解析することで単一微粒子の赤外分光が可能であることを示しました。本研究はマイクロスケールの微粒子を利用した実証実験であり、現在は、更に小さい微粒子等(ナノ粒子、ウイルス、タンパク質、分子)に対しても操作できる技術を開発しています。

研究テーマ3:光熱効果を利用した微粒子・細胞の局所濃縮技術

レーザーにより、水が温められるとその周辺に温度勾配が生じ微小物体を集めることができます。これは光による熱泳動や光熱トラップと呼ばれています。最近ではスライドガラスにコートされた金属薄膜等に一度レーザーを吸収させ、そこから溶媒を間接的に加熱する手法が主流です。

我々の研究では、2μmのレーザー(Tm doped fiber laser)を用いて水の分子振動を励起し直接加熱することで、 光熱トラップできることを示しました[Opt. Exp. 29, 38314 (2021)]。また最近では3μm帯のフッ化物ファイバーレーザーをレーザ科学研究室と共同で開発し、さらに効率的な光熱トラップの技術を開発しました[Opt. Exp. 32, 12160 (2024)]。金属薄膜等の前処理を必要とせず中赤外レーザーを照射するだけで光熱トラップが可能となります。現在では更に効率を向上させるために、光源開発から新たな取り組みを始めています。

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