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豊田工業大学 研究センタースマート光・物質研究センター

スマート光・物質研究センター

2016年度設立 センター長:大石 泰丈

【レーザ科学研究室】超短光パルスレーザと計測技術の研究開発

教授 藤 貴夫、講師 工藤 哲弘

主な研究内容・成果

①サブサイクル中赤外光パルス発生と分光応用

フィラメンテーション法という独自の技術を使って、 世界で最も短い7フェムト秒の中赤外光パルスの発生に成功した。 これは、光電場が一回しか振動しないような、極限的に短いパルスを容易に発生できる画期的な手法であり、 現在でも超高速光科学の分野で注目されている技術である。 [IEEE J. Sel. Top. Quantum Electron. 21 8700612 (2015)など]。 また、この7フェムト秒中赤外光パルスを利用して、高速な赤外スペクトル計測、フェムト秒ポンプ・プローブ分光やハイパースペクトラルイメージング分光装置の開発を進めている[J. Opt. 17 094004 (2015)など]。


高強度レーザを空気中に集光して生成したプラズマチャネル(フィラメンテーション)

②光電場波形計測技術の開発

数フェムト秒(10−15秒)の周期で振動する光の波を計測する 新しい手法を開発した[Nat. Commun. 4 2820 (2013)など]。 光電場周期よりも短い参照光パルスを必要としないことから、 従来のアト秒パルスを使った光電場の計測手法と比較して、 はるかに簡便で画期的な手法である。 高強度場物理の研究や超高速な光スイッチの開発において、有用な手法と考えられる。 現在では、本手法が様々な波長領域で利用できるように、技術開発を進めている。


開発された計測技術によって測定されたサブサイクル中赤外光パルスの電場波形

③高出力フェムト秒固体レーザの開発

高いコヒーレンスを持った広帯域、高強度の中赤外(3-20μm)光源は、 高強度物理のような基礎科学から、大気汚染物質の同定、医療における新しい非侵襲的な検査法の開発など、 環境科学、医学、生命科学に渡る広い範囲への応用がある。 そのようなコヒーレント中赤外光発生において、2μm帯で発振する高強度レーザからの波長変換が 非常に有効であることがわかっている。

本研究室では、2μm帯で360fs、1.3mJ程度の光パルスを発生する固体レーザ装置を開発した[Opt. Express 26 29460 (2018)]。 レーザダイオード励起によって直接2μmの高エネルギーフェムト秒パルスを発生するレーザとしては、 世界で初めてのものである。 実際に、このレーザーを使って、コヒーレント中赤外光発生も実現した[Opt. Express 27 24499 (2019)など]。 コヒーレント中赤外光発生だけでなく、レーザ加工用の新規光源としても期待できる。 現在も、ファイバーラボ株式会社と協力して、新規2μmレーザの製品化を進めている。


(左)開発されたツリウム固体レーザ再生増幅器の増幅部分と(右)ファイバーラボ株式会社と協力して製作した2μmファイバ増幅器